
総領事館からのお知らせ
平成22年7月15日
感染症(ダニ・蚊による媒介)に対する注意喚起
1.夏期は郊外に外出する機会が増えると同時に、ダニや蚊に刺されやすくなる季節でもあります。しかし、例年、ダニや蚊が媒介する伝染性の感染症発症例が報告されており、注意を要します。
2.ダニが媒介する感染症の主なものにはロッキーマウンテンスポティッドフィーヴァー病(RMSF)、エールリッヒ病及びライム病が挙げられます。いずれも病原性バクテリア等のキャリアとなっているダニの咬傷により感染します。保健省の調査によれば、RMSFとエールリッヒ病が増加傾向にあります。RMSFに関しては、統計を取り出した1920年代から毎年250~1200件の発症例が報告されており、1972年から1990年にかけては継続して1000件以上の発症例を認知しています。2001年に一旦発症例数が減少しましたが再度増加傾向に転じて、最近では1000件前後に推移しています。
3.RMSF感染時の初期症状は、発疹及び痒みです。しかし、RMSFに感染しても10%~15%の人にはこれら初期症状が発現しない例も報告されています。その後、発熱、吐き気、嘔吐、頭痛、筋肉痛、関節痛、疲労感、腹痛等が2日~2週間程度継続し、食欲減退、幻覚、光線過敏症等の症状が発現することもあります。重症化すれば、血小板減少症、低ナトリウム症、髄膜症を引き起こす虞もあります。エールリッヒ病もRMSFと酷似した症状を呈します。
4.ライム病感染時の初期症状は、ドーナツ状の発疹です。最初赤い点状の発赤から漸次拡大していきます。その後、痒み、蕁麻疹様発疹、リンパ腺の腫脹、眼瞼の腫脹、眼の充血等の症状が発現します。人によってはドーナツ状の発疹を発現しない症例も報告されています。通常は2~3週間でこれらの症状は消失します。しかし、重症化すれば関節炎(肘、膝、手首)や、顔面麻痺、手足の疼痛等が発現します。
5.治療法としては抗生物質が有効で、特に初期段階で治療を受ければ重症化する虞は少なくなります。ダニに刺された後、RMSF等の初期症状が現れたなら、早期に医療機関において受診することが肝要であり、その際、ダニに刺されたことを医師に伝えることが大切です。子供はダニに刺されたことを自覚していない場合があるので、普段からダニに対する知識を教育しておくことと発熱した場合等単なる風邪症状等と早合点せず、子供の体表面を良く観察して、発疹の有無を確認することも大切です。
6.ダニの通常の生息域は、草地及び森林地帯です。ダニの生息域に出かける場合の注意事項として、まず明るい色の衣服を着用することです。これにより衣服に付着したダニの発見が容易となり、除去しやくなります。ズボンの裾は靴下に挟み込み、ダニが入り込む隙間をなくします。駆虫剤入りの防虫剤を衣服及び皮膚にスプレー塗布し、ダニが付着するのを忌避させます。外出から戻ったら衣服、体、頭髪にダニが付着していないか点検します。ペットを同行させた場合、ペットの体も良く点検することが必要です。
7.ダニが皮膚に顎部を食い込ませて付着しているのを発見した場合は、ピンセットで真っ直ぐに引っ張って除去し、消毒薬を塗布します。除去時に捻ったりするとダニの口部や顎部が皮膚内に残留する虞があります。除去したダニはビニール等に入れて、しばらく保管しておきます。後刻、RMSF等の初期症状が発現し、医療機関に受診する時、保管しておいたダニを医師に見せれば、適切な医療を早期に受けることが出来ます。
8.蚊に関しては、ウエストナイル熱を媒介し、毎年発症例が報告されています。初期症状として感染後、2日~2週間後に発熱、頭痛、筋肉痛、吐き気等が発現します。リンパ節の腫脹、胸部、背部、腕部に発疹が発現することもあります。これらの急性症状は通常は1週間位で消失します。重症化すれば高熱、頭痛、方向感喪失、痙攣等の脳炎症状(ウエストナイル脳炎)が発現します。
9.治療法としては対症療法しかありませんが、早期の治療が重症化を防ぐことになります。予防法としては蚊に刺されないことしかありませんが、蚊の発生を防ぐことが有効な予防策であり、家屋周辺に水溜りを作らないことです。ビンのキャップ程度の水溜まりでも蚊は産卵することが可能であるので、どんな小さな水溜りも見逃さず除去することが大切です。
10.ダニや蚊が媒介する感染症は重症化すれば恐ろしい病気ですが、ダニや蚊に刺されても必ず発症すると言うことはありません。しかし、特に乳幼児や高齢者等の体力、免疫力が弱化している人は感染・発症する可能性が健常者よりも高くなりますので、予防対策をしっかり取ることが肝要です。